■全体的な世界像
かつて全世界は、魔法を自在に操る『純血種』達によって、数百年に渡り支配を続けられていた。
純血種は、見た目も肉体的にもただの人間なのだが、異常なまでの先天的な魔法的素養を持ち、その力で全世界を手中に収めていった。
魔法を使えない種は、家畜であり、奴隷であり、同じ人間種族ですら魔法が使えなければ『蛮族』と蔑まれ、奴隷として使役されてきた。
しかし、数百年の時は、多数の混血を招き、純血種の数は減少し、その魔力も全盛期からは遥かに劣ったものへとなっていく。
それに従い、世界各地で蛮族や亜人種の叛乱が興り、この百年ほどの間に、世界の大半は純血種達の支配から逃れ、自由を勝ち取っていった。
多くの国が興り、平和を享受していたが、平和は豊かさに繋がり、豊かさは新たなる争いを産む。
純血種も全滅した訳ではなく、さらには純血種に捕らえられ、使役され、創造された怪物たちは全世界に蔓延っている。
この世界は何処に向かって進み、何処へ辿り着くのだろうか──
■ゲーム範囲
とある大陸の北西に位置し、大陸との境界を8000メートル級の山々が連なるアマジュアク山脈によって遮られた陸の孤島、バフィン半島がこのゲームにおける舞台となります。
大陸などの世界との交易はありますが、ゲーム的なフォローの予定はありません。
バフィン半島から旅立つ=このゲームから旅立つ=他のTRPGをやる
と思ってください。
この決して広大とは言えない世界を飛び出して、他の世界(=他のTRPG)に旅立ってもらうことこそ、このゲームの本義です。
■バフィン半島
東側に聳え立つ山脈を持ち、周りは海に囲まれた半島です。
南東には数十年ほど前に建国されたばかりの聖バフィン王国があり、半島唯一の王国です。大陸との交易をするための港町もあります。
北東には、アマジュアク山脈を少し分け入ったところにドワーフ族の地下集落があり、更に山脈の奥には竜の巣があるとも、古代の純血種達が残した魔法装置があるとも言われています。
北西にはエルフの住む広大な森があり、その先に何があるのかは明らかにされていません。
南西には砂漠と荒野が広がり、純血種達の残党が逃げ込んだとも言われています。遺跡のようなものも数多く発見されており、その噂を信憑性のあるものとしていますが、残党が発見されたことは無く、推測の域を出ないのが現状です。
半島の中央には、北西の山脈から南の砂漠の外縁を抜け、海までへと繋がるイカルイット大河があります。
この大河を遡っていくと、頂を見ることが出来ないほどの高さと幅を持った大瀑布に突き当たります。
この半島に流れる河川のほとんどは、この滝壺が源流になっていると言われています。
■聖バフィン王国
約40年前に、クライドという名の戦士が、奴隷であった人間種族を解放し、ドワーフやエルフの協力を取り付け、バフィン半島を純血種の支配から解放し、建国した国です。
味方であったドワーフやエルフの居住区を脅かすことなく、また、王国に組み込まれることを嫌った人々を追い立てることもしなかったため、半島全てを領土としている訳ではありません。
領土内では、政治と軍事の集中化を避け、将軍や大臣といった役職の高いものには、高い爵位と俸禄を与え、上級騎士らには低い爵位と領地を与えて、緩やかな地方自治による統治を行っています。
そのため、大きな街と言えるものは、首都であるバフィンと、国境守備のための城砦がある王弟ボーデンの治めるボーデン領の主要都市レイク=バーバーの2つだけです。
もちろん、各地方領地には、町や村が点在しており、国王の方針により、領土全土で街道の整備が進められています。
建国から40年経っている事もあり、領内の主な人の住む場所はほとんど街道が開通しています。
ですが、街道の充実に比例して、野党や追剥の類も増加しており、また、新たなモンスターの住処が発見されることもあり、その自治のために、冒険者が求められ、推奨されています。
それだけではなく、優秀な人材を王国に迎えるという意図もあるようですが。
国教は定められておらず、首都には三主神全ての礼拝所が建てられて居り、その他の宗教も含め信教の自由が認められています。
このように比較的緩い統治がされては居ますが、国王クライド自身は烈王とされる類の人間であり、性格は温和で柔軟性も持っていますが、甘言や支配者側の利益に対しては非常に厳しく、その発言力、決定権はかなり強固なものとなっています。
それ故、国民からも愛されていますが、年齢が年齢であり、もしもクライド王が崩御するようなことがあればこの国の平和は終わる、という悲観的な噂も流れています。
■首都バフィン
首都バフィンは、北側の山を背にして建てられた聖バフィン城の南側に城下町が広がる形で発展しています。
聖バフィン城は、半島の解放の祝賀ということで、ドワーフ達の手によって建造された華美な物であり、一応堀は掘られ、城壁も作られていますが、基本的には戦闘を意識した造りにはなっていません。
城の周りには、将軍や大臣達、国の重鎮の自宅があり、それをさらに囲む形で、国民の家や商店が存在します。
街を大きく東西南北に分けて俯瞰してみると、
北側に聖バフィン城があり、
太陽の昇る東側には、創造神ストラの礼拝所が、
太陽の落ちる西側には、破壊神ピナーカの礼拝所が、
太陽が一番高く登る南側には、調和神ガウリーの礼拝所が
それぞれ存在していることがわかるでしょう。
城の正門から繋がる大通りをまっすぐ南下していくと、中央に噴水のある大広場に突き当たります。
そこでは毎日、市場が立ち、また、国立図書館、国立魔法学校、国営医療所、国営酒場といった、公的機関の建物が並んでいます。
・国立図書館
一般開放されている図書館。ほとんどの基本的な事柄はここで調べられます。
とはいえ、通常出版されている本ばかりで、魔法書の類は存在しません。
・国立魔法学校
古代語魔法を教えている8階建ての塔。
5歳~10歳までのロースクールと11歳~15歳までのハイスクールに分かれています。
卒業後は学校に残り研究を続ける者や、指導者となる者、王宮に勤める者、冒険者となる者がほとんど。
ここで学んでいない魔術師は、どこかに隠棲している魔術師に師事したか、独学となります。
1階は一般開放されており、入学の手続きをする窓口などがあったりしますが、2階以上は生徒や教員以外は入れないようになっています。また、国中の魔法書はここの書庫に収められるようになっており、<杖>が生産されるブロックなどもあるようです。
その性格から、内部の秘密保持の必要性が高く、かなりのセキュリティを誇っています。ですが、同時に中で何が行われているかわからないという側面も持っており、真実はともかく悪い噂が流れたりもしています。
・国立医療所
いわゆる病院ですが、常時詰めている職員の他に、持ち回りで各教団の司祭達も治療に当たっています。
内部に医療技術を学ぶ場所も併設されており、半島における科学の最先端を担う場所でもあります。
・国営酒場
店の名はバーボン。
国営の酒場であり、多くの冒険者が集う場所である。3階建てで宿屋としての機能も備えていますが、最大の特色はその情報集積量です。
様々な噂や依頼が舞い込む場所であり、冒険者には必須の場所となっています。
国営という性質上、王宮からの依頼もここで公表され、また優秀な冒険者の王宮仕官への斡旋も行われています。
■ボーデン領
王弟ボーデンの治める領地で、非支配地区との国境に位置しています。
つまりは有事の最前線となる場所であり、その城は正に城砦と呼ぶにふさわしい戦闘的な城が建造されています。
そのため兵士達の宿舎はありますが、城下町といえる街は無く、領内最大の都市レイク=バーバーは城から南に3時間ほどの場所にあります。
・レイク=バーバー
その名の通り、半島最大の湖であるバーバー湖のほとりに造られた街で、交通の要衝でもあり、首都に負けないほど栄えています。
観光地としても人気が有り、活気に溢れている町です。
■帰還王クライド
クライドは元々蛮族として純血種に奴隷として扱われていました。ですが、弟や仲間と引き離され、労働力として大陸に輸送された際、大陸のレジスタンス勢力による奴隷解放運動によって救われたのです。その後、剣の腕を鍛え、そのレジスタンス勢力の一員として各地で戦い、ついに大陸を純血種の支配から解放したのでした。
その後、数人の仲間達と故郷であるバフィン半島に戻ったクライドは、『放浪者』の助けを得ながら、人々を解放し、エルフやドワーフと親交を結び、バフィン半島をも解放しました。
その後彼は王国をうち立て、そうして国民達に帰還王と呼ばれるようになったのです。
■アマジュアク山脈
標高8000m級の山々が連なり、大陸との断絶を産む物理的な壁となっています。半島の西端から東端まで続いており、陸路で大陸中央部に向かうことは実質的に不可能です。
その不可侵性からか、竜の巣があるとも、純血種の遺産があるとも言われていますが、登山だけですら命がけであり、その噂の真偽を確かめたものはいません。
ただし、最近の学者の研究によると、この山脈の造りは地質学的におかしいとされており、何かがあることは確実だとも言われています。
■大瀑布
山脈を東西にわける中央から西寄り辺りにある大きな滝とその下の湖部分をまとめてこう呼んでいます。
滝というよりは、天も見えない高さの断崖から大量の水が流れてきているというべきかもしれません。
恐らくはアマジュアク山脈の雪解け水が水源と思われます。そしてこの大瀑布が源泉となり、河川となって半島全域の人々に水を供給しているのです。
そのため、水の汚染については注意が必要なのですが、大瀑布自体がエルフの森の一部にあることもあり、エルフの人々が監視を兼ねて近辺に集落を作っており、汚染の危険は低いといえるでしょう。
■イカルイット大河
半島を縦断している大河です。
季節によっては帆船で遡り、バーバー湖に至ることすら可能で、様々な恩恵を人々に与えています。
■エルフの森
大瀑布を東端とし、非支配地区の一部までを覆う大森林です。
王国の支配を受けない自治区ではありますが、そもそもエルフ以外の侵入を拒む、迷宮の魔法がかけられていることもあり、森林の奥へは自由に出入りが出来る訳ではありません。
とはいえ、エルフが非友好的な訳ではなく、森林の外縁では人間の狩人が自由に狩りをしていますし、人間達の中に自分から混じっていくエルフ達も多く居ます。
また、非支配地区との交流も少しはあるようです。
■ドワーフの地下王国
山脈を東西に分ける中心に、大瀑布と対称の位置にドワーフ族の地下王国があります。
ドワーフは各地に集落を持って暮らしていますが、その最大のものがこの地下王国であり、自治区として認められているのはここだけとなります。
■非支配地区
王国の支配を嫌った人々が住む自治区です。
国家のような大きい集団がある訳ではありませんが、決して貧しい訳ではなく、土地も肥沃で人々は牧歌的な生活を営んでいます。
貨幣流通はあまりしていないため、王国領土内の都市部のような豊かさがある訳ではありませんが。
とはいえ、集落によっては野心を持っていたり、王国を恨んでいたりもするのかも知れません。
現に、聖バフィン建国から10年後に、王国に対して戦闘を仕掛けたいくつかの集落もあり、それが元で王弟ボーデンによる国境の監視と防衛が行われることとなりました。
そのため非支配地区側でも王国の統治下に入るべきだという者もいますし、王国側でも統治すべきだという過激派も居ます。
国王クライドは武力統治するつもりはないことを公言していますが、何が起こるのかわからないのが現状です。